遠い昔、ベータ星から地球への移住があった。
移住したての頃は、高濃度酸素と巨大昆虫、木生シダに悩まされる過酷な環境じゃった。
ベータ星由来のもんは使えんようになり、地球由来のものを加工しながら使うしかなかった。
石や泥や粘土を加工して、熱はシダを燃やしながらとなった。
城壁を作るにもレンガを積み重ねて、宇宙船の中の機械を使いながらのことじゃった。
高度な文化のあったベータ星に比べて、何もない環境。
たくさんあるものを、資源として活かすしかなかった。
今回、原発事故で東京から姫路に移住して、同じように文化水準の低下を余儀なくされた。
ネット社会になり、思うたほどの不自由さは感じないものの、それでもやはり日本の中心地から外れたさびしさはある。
こちらに来て、ベータ星から地球に移住したような感覚がある。
見渡す限りセイタカアワダチソウの原野が広がるだけで、目ぼしいもんがないように見えた。
しかし、ふんだんにあるものを加工して活用することにした。
ふんだんにあるのは、セイタカアワダチソウや石ころ。
セイタカアワダチソウは、資源としては申し分なかった。
焼けば大量の炭や灰を提供してくれて、波動では毒消しの魔法力も手に入る。
毒消しの魔法力は、石に吸着させて波動石にできる。
灰や炭が、農業への貴重な肥料になる。
やはり、ベータ星からの移住の経験が役に立ったと言える。
教訓としては、たくさんあるものは容易に資源化できるいうこと。
昔は豊富なシダ、今は豊富なセイタカアワダチソウ。
文化水準の低下があった場合には、程度の差はあれど不自由さはつきまとう。
しかし、素早く環境に順応して次に備えにゃいけんのよ。
その順応に必要なもんは、何が資源として使えるのかを判断して、それを活用することなんよ。
それが迅速にできるほど、新たな環境に順応して活躍できることになる。
もともと田舎におった人で、セイタカアワダチソウを資源として活用することを知っとる人はおらん。
活用できる者には宝に見えて、以前の東京の生活に戻りたいとも思わない。
天変地異の不安におののきながら暮らすより、充分な資源を活用して農産物を産み出す喜びの方が、どれだけええかわからんのよ。
目を凝らしながら暮らすうち、キョウチクトウやアレチウリの活用まででき、さらに外来種を中心に活用可能資源が増えとる。
ありがたいことじゃ。
姫路に避難した時にはある意味絶望感しかなかったんじゃけど、気を取り直して環境に順応するうちに、新たな可能性や希望が見え出したんよ。
過去の経験は、活かせたら活かすべき。
これからも、資源開発に邁進したいんよね。