アスペルガーのYさんの仕事ぶりを目の当たりにした前やんは、驚愕し落胆した。
アスペルガーノートを作り、これならできますよと思うた矢先に見た粗末な作付け現場。
サツマイモを通して、仕事の理念を持つことを念頭に置いたアスペルガーリハビリ、それをあざ笑うが如くにすり抜けて失敗する。
私は一緒に行動した3年ぐらい、この不可解なYさんの行動に翻弄され苦しんだ。
直接教えるのをやめて、指導を前やんの遠隔操作に切り替えた。
私は私の研究開発や作付けに集中し、前やんも遠隔操作じゃけえ片手間で対応して作付けに集中。
Yさんに翻弄されることを極力なくすことを考え、そうなった。
しかし、相変わらずYさんはよかれと思いながらダッチロール。
教えても抜けよるけえ、自転車の補助輪よろしくカンニングペーパーでゲタを履かせることに。
それで作った、サツマイモ栽培におけるアスペルガーノート。
それをその通りやれば、自然とサツマイモはできることになっとった。
しかし、Yさんのアスペルガーの魔物の威力を甘く見るべきではなかった。
見事にすり抜けて失敗するその道筋を見ながら、どこにバグが発生するかを拾うことになる。
おお、逆に言えばこれは普通に仕事をするよりも、濃密なマネジメントスキルを獲得できるチャンスではなかろうかと考えるようになった。
前やんも私も、決められた仕事に関してはサクッとやり、新規のことも初期の失敗を学習して次からはサクッとやる。
その新規の失敗学習をしたら、スキルアップはそこまでなんよ。
既存のことに関しては、突発的なことでもない限り仕事が積み上がりよるけえ、学びにならんのよ。
しかし、失敗するはずのないとこを失敗して、余計な仕事を作り出すYさんに関して言えば、その予測不能な失敗のリカバリーにはすごく苦労することになる。
Yさんは以前おった職場では、書類作りをしとった。
しかし毎回完全にはならんけえ、必ずフォローする人がおって完成させることになっとった。
しかしそうなると、やり直しの手間がかさんで時間もかかる。
最初から全部できる人に任せた方が、人件費も時間も削減できる。
それで、仕事を減らされクビになった。
逆に言うと、そこで生み出される余計な仕事や厄介なトラブルに取り組むことで、通常得られないスキルが生み出せる。
今年のサツマイモ栽培で言うと、私や前やんとかは作付けリミット7月末までの間に灰の投入も含めて植え付けはもう終わっとるんよ。
しかし、作付けリミットを8月末までと思うとったYさんはのほほんとしており、灰すらあげておらず作付け量なんかもやったうちに入らんぐらいのショボさ。
リミットギリギリで急遽プランターを準備させ、灰を準備させてリカバリーで増産フル稼働。
このギリギリでの増産フル稼働いう作業は、とっくに終えとる私や前やんには起こり得ない。
カサンドラ症候群にならんよう遠隔で指導のもと、通常とは異なるスキルが必要とされる。
一般的な人が1から10まで仕事が積み上がって終わるのに対して、その間が部分的に不規則に抜けてそのままでは積み上がらん感じ。
その虫食いのとこを部分補修しながら埋めていく、それも後手後手でやらにゃいけんけえ、毎回不意打ちを食らうことの尻拭いになるんよね。
普段あり得ない仕事状況を提供してくれるYさんのその特性は、それに対処していった時にすごくマネジメントスキルが高まっとることじゃろう。
一緒に行動すると、こちらの思考力が削がれたり仕事自体をぐちゃぐちゃにされることがあるんで、あくまで遠隔遠隔。
サツマイモ栽培自体の仕事の難易度は、それほど高くはない。
Yさんにはその仕事を通してリハビリさせ、仕事の理念を掴んでもらえればええんじゃけど、その時発生しよる難易度の高い仕事は、私や前やんの腕の見せどころになる。
場合によっては、オルゴンMなんかにも参戦してもろうて、簡単な作付けにあたってのことをつつかせるのもええのかも。
ただ、このバカタレ何やっとんじゃいってなる可能性もあるんで、いや必ずそうなるんで予め想定をしっかり持っとかにゃならまあ。
Yさんにかかわらず、身近におるそういう人おったら、被害が出ん程度に関わってマネジメントスキルを高めることやってみるべきなんかも。