先日の話、かつての親友Sのことなんじゃけど、その転落のメカニズムについて話をします。
彼は中学の時から仏教理論に惹かれ、傾倒していった。
おそらくカルト教団Kがなくとも、同じような宗教を求め、やがて活動しとったことは容易に察しがつく。
宗教がある限り、彼は活動する性格じゃったんよ。
彼は家庭的には平和で、勉強やスポーツ両方優秀じゃった。
順境で育ちがよく、言うことも正論。
入学時から落ちこぼれていった私とは、正反対の立ち位置じゃった。
実家の虐待とイジメと落ちこぼれの苦しみに喘ぐ私は、正論をはき学業スポーツ優秀な彼を羨み、身の上の不幸を嘆いた。
クラスで嫌われ者が出ると、それをかばうS。
私はそういう無差別な正義ヅラが
気に入らんかった。
おどりゃこれまで疎遠じゃったやつ、性格が合わんかったやつと、嫌われ者いうだけで親しくするんか?性格を考えてからにせんかい!って思うたんじゃけど、耳は貸さんかったね。
やがて彼は私の苦境に手を差し伸べてくれた。
学校での精彩のない私、落ちこぼれてイジメられてろくなことがなかった。
強くなりたいと思うとった私に、彼は気功や武術に関してアドバイスしてくれた。
イジメに対抗しようと入った柔道部、しかしそこでもイジメられてどうもならんかった。
体重が軽い私が、体重が倍ある相手に勝てるはずはなかった。
柔道部には同じくイジメられとったゾロのH君に誘われて入ったんじゃけど、部活に真面目に行ったところで全然強くならんことを悟り、休部して筋力をつけることをした。
その時Sは、合気道や気功仙道のことを話してくれた。
ゾロのH君にも、真面目に部活なんかやっとってもダメじゃって言うたんじゃけど、ムダじゃった。
筋トレの効果からか、高校の終わり頃に柔道部で休部明けで乱取りすると、H君と互角以外誰にも勝てんかったのが、2人ぐらいに勝ててブン投げてやった。
しかし、私は虚しかった。
こんなことで強さを求めたところで、いつか引退の時期が来る。
それより、ずっと引退のないことに打ち込みたい。
そういう意味では、Sの気功の話は魅力的じゃった。
高校卒業間際に小周天を成功させた私に、初めて彼が羨むような表情を見せた。
おまえには素質があるんだね。
寂しそうにそう言う彼には、落胆する何かを感じた。
そもそもは、彼が小周天を成功させたいとか言うとって、私が成功するまでは、いろいろアドバイスくれたもんじゃった。
気を巡らしたつもりになっとるだけで、空車を回しただけかもしれん。感覚を確認しろ。とかね。
素質はないくせに、的を得たことを言うんで助かった。
ここで彼も小周天に成功しとったなら、その後が変わっとった可能性が高い。
高校の終わり頃には、私と彼は真面目に修行する者同士の会話に変わっとった。
彼の言う綺麗事が、私に活路を与えてくれた。
しかし、違う点は私には逆境でヤキが入っとることじゃった。
やがて彼は、その綺麗事の世界で転落していくことになる。
カルト教団Kの活動にのめり込み、大学を留年した挙句学費を私に借りた。
さらに就職しても長続きせず、打ちのめされていった。
宗教の説く理想の世界とはかけ離れた現実の逆境、心の備えのない彼を打ちのめすのは容易かった。
順風満帆な者が、若い時期に理想的な世界の話にひたると、抵抗力が育たず転落のリスクが高まる。
彼はそういう例なんよね。