六崎家では、祖父の打ち立てた学歴ブランド思考により、国立の医学部入学が義務付けられ、さもなくば私立の一流大学、最低でも国立大学でなければ無能と見なされた。
そうした中、両親からの虐待でボロボロの私は、同じ世代の中では下から数えた方が早い順位であり、反乱を起こして実家の権威を失墜させた。
私は本家の長男で、跡取りの立場。
祖父の変な長男信仰で、私は祖父から弟たちはゴミのようなもんで、長男だけが大事じゃみたいな言い方をされとった。
その割に祖父の長男である父の暴力のことを祖父に訴えたところで、幻影じゃと言われ親戚中では父の言う嘘が信じられとった。
私は勉強ができんバカであり、親不孝者じゃいうことなんよ。
外でもええ先生で通っとる父、しかし人を殴るのが好きで嘘ばかりつく。
聖人君子みたいな顔をしとるのを見ると、腹ただしいのを通り越してバカらしかった。
父の悪業は、腹違いの弟や母への暴力その隠蔽と、中学教師じゃった頃には抵抗できない生徒への暴力があり、性格が陰湿でヒステリックかつしつこかった。
親戚中を味方につけて、みんなで私を攻撃した。
一対多数の全面戦争並びに学歴ブランド思考の重圧、メタメタに打ち負かされた。
長年私には、親不孝者の烙印がつきまとった。
親と争うとる者イコール親不孝者いう図式は、田舎ではごく自然に見られがちなことじゃった。
親不孝それだけで、攻撃するには十分過ぎる理由じゃった。
しかし風向きが変わったのは、最初に父の作品を壊した時じゃった。
今から22年前、職場をかき回されたことで3体作品を破壊した。
その時、親戚中に動揺が走った。
いくらなんでもそこまでやるのは、父親に問題があるんじゃなかろうかいうことになった。
さらに15年前に作品をことごとく壊した時には、父の妹夫妻から父ともども呼び出しを受けて尋問された。
やりとりを聞いて父のウソがバレて、悪事が露見した。
作品破壊の時祖父はまだ生きており、裁判で訴えてやるとか言うたらしいんじゃけど、弱っとったこともあり何もできんかった。
祖父の作り上げた学歴ブランド思考と長男信仰、長男の私が撃ち破った。
私が思うに、大学は行くべきじゃと思う。
しかしどこに行こうと、志望の学部であればええと思うんよ。
それで、本人が進みたいとこへ行けばええだけなんよ。
一番とってどうなるん?
一番とってもええんじゃけど、とらんでも死にゃせんわい。
たしかに一番とると、カッコええことだけは確かじゃ。
しかし、そういう人が役に立つとは限らない。
何のための勉強なのか、何のための一番なのかをじっくり考える必要があるのう。
高卒や中卒でも、成功する人は成功する。
しかし、その確率は低い。
やはり大学は、いろんな意味で行っといて損はない。
あと祖父が言うように、みんなして医学部行ったらそれもそれでまたおかしな話なんよ。
いろんな職業いろんな人がおって、初めて社会が成立するんよ。
ああいう学歴ブランド思考は過度の競走を生み、弊害もデカかった。
私よりももっと学歴に関して厳しい環境におったのが、カルト教団Kの教祖長男よね。
東大もしくはそれに準ずる大学を要求され、一番を要求される。
何のための大学のランクなのか、何のための一番なのか、ズバリ体裁のためと言えば簡単な答えなんよ。
東大のための東大、一番のための一番いうことなんじゃろう。
その後がないんよ。
六崎家も医学部のための医学部であり、一流大学のための一流大学なんよ。
同じじゃのう。
勉強はしなさ過ぎるのも問題なんじゃけど、やり過ぎもまた問題であり、その方向性や意図も誤るとまたとんでもないいうことなんよ。
人生はある程度の学歴と、あとは本人の持ち味で形成されるもんなんよ。