欧州連合(EU)は、ギリシャの国民投票で財政緊縮策に「ノー」の民意が示されたことに衝撃を受けている。
同国のユーロ圏離脱が現実味を帯びることになり、欧州統合の歩みを後戻りさせかねないからだ。
チプラス政権の基盤は強化され、ギリシャとの新たな金融支援交渉が早期にまとまる可能性は遠のいた。
EUは戦略の練り直しが急務だ。
トゥスクEU大統領は5日、国民投票の結果を踏まえて対応を議論するため、今日緊急のユーロ圏首脳会議を開催する方針を明らかにした。
これとは別に、ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領も昨日パリで会談し、今後の方策を練る。
緊縮策は国民投票で拒否されたが、仮にEUが緊縮策を撤回して譲歩案を示したとしても、ドイツなどのEU加盟国議会で承認を得られる公算は小さい。
スロバキアのカジミール財務相は投票結果を受け、ギリシャのユーロ圏離脱が「現実的なシナリオになった」と認めた。
今回の国民投票の影響は、経済にとどまらず、EUの政治統合にも及びそうだ。
拡大の歴史しかなかった通貨ユーロの信認に傷が付けば、域内各国のEU懐疑派が勢いづくのは必至。
今年末には、ギリシャの与党・急進左派連合の友党である極左政党ポデモスが勢力を拡大しているスペインでも総選挙が控えている。
同国のラホイ首相はギリシャの国民投票前、スペインのメディアに対し、いったんユーロ圏離脱が起きれば、「ドミノ効果が誘発されるリスクは深刻だ」と懸念をあらわにしていた。
今後はEUでも同じように財務状態が悪い、スペインやイタリアなどが似たようなことになる危険性もある。