私の細菌の知識、薬大だけじゃなかった。
最初の就職先の製薬会社、抗生物質が主力じゃったけえ、入社時研修で寮に詰められて2ヶ月ぐらい勉強させられた。
そうじゃそうじゃ。
抗生物質が、どうやって細菌を殺すかをやっとったんじゃ。
セフェム系やペニシリン系のβラクタム環のもんは、細胞壁を合成するのを防ぐ。
そのため、細胞壁の亀裂ができて中身がはみ出して、破裂して死ぬんよ。
アミノグリコシド系はアミノ酸の合成阻害。
そうそう、やったやった。
そんなのいろいろやって、うちの会社のやつが一番て思って医者に売り込みに。
しかし、現実にはもっと効いたり、安いものがあって、やるのは価格交渉ばっか。
お金に汚い二度とやりたくない仕事じゃのう。
そこで思ったのが、細菌と抗生物質のいたちごっこ。
抗生物質に殺されないように、細菌も頑張る。
細菌が強化されれば、薬を強くする。
さらに細菌が強くなり、薬も負けじと新しいのが出る。
いい加減、もう薬が効かないもんが院内感染で問題になる。
MRSA、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌なんか出てきて社会問題になった。
それをようやくなんとかしたら、MDRP、多剤耐性緑膿菌が出てきた。
さらに多剤耐性腸球菌。
抗生物質で他の菌が殺され、生き残った菌だけが独占的に繁殖する。
まるでセイタカアワダチソウの一人勝ちのようなもん。
そういうの見ると、菌の集合体にも意思のようなもんを感じた。
あと、面白いのが、薬の効きが悪い時に、古い世代の薬を使うと劇的に効いたりする。
そういうことがあると、細菌自体の備えも完璧でもないのもわかる。
菌も生き残りのために、いろいろやる。
プラスミドっていう核以外の遺伝子を受け渡したりもする。
まるでラグビーかフットボールじゃのう。
そんなこんな、現在の科学だけでは説明できん要素を細菌は持っとる。
そういうことも含めていろいろ勉強、というよりは感じてほしい。
薬大を出ずにあの社内研修受けた人は、内容はわからず、これは効くとかいうことぐらいしか知らんね。
薬大出て受けた人も、どこまでどうか定かではない。
やはり何事意識して取り組んでこそ、実力になるんよね。