かつて、大学時代に取り組むことになった2足のわらじの問題。
そのことを東京で言うとったのは、もう15年ぐらい前か。
当時熱心にそのことに関して質問したりして、会得したい姿勢がアリアリじゃったアスペルガーのYさん。
それなりに質問に答えたりしとったことが、まるっきりムダじゃったことが、今となっては痛いほどわかる。
学生時代にやっとった2足のわらじ、それは学業と地獄バイトの両立じゃった。
もともと学業だけでもアップアップしとったところ、さらに地獄バイト。
当然全兵力は半減し、一つのことに100で当たっておったとして、二つになることで50と50になる。
それをそのままにしておくと、当然両方から怒られる。
しかし、結果的にそれらを両方とも90ぐらいずつにすると、文句は言われんようになったし、逆に褒められた。
もともと100が1つで100、それが90ずつが2つで180。
そうなると、その増幅分の80が飛躍した部分になる。
しかし半分に分けたその力にも、ある程度そこに盛り返すだけの力がなければ、決して増えない。
そこに必要なものは、下げ止まりの力なんよ。
力が半減したその時に、いかに踏み止まれるかがまず重要になる。
さすがに取り組むことが多くなり過ぎると、力はさらに分割されて各々のパワーはさらに下がる。
3つになると単純には33が3つになり、4つなら25。
その兵力で持ち堪えられるかどうかが、ミソになるんよね。
例えばアスペルガーのYさんの場合なんじゃけど、パワーを分割するまでもなく、1つのことを20ぐらいしかできないとする。
そうすると、2つに分割すると10ずつになってしまい、そこからどうかいう話になる。
物事や仕事に関して、そこそこのクオリティを出せるレベルはある。
最低限のそれが例えば60ぐらいとすれば、私が2つやることになって50になったとしても、もうちょっと何とかすれば到達できるレベルなんよね。
しかしもともと1つのことで、20しかできない者がさらにそれを分けて取り組みを増やしたところで、まずそれらを増やすことはできんのよ。
それがギアがハマっとらんいう状況であり、いくら熱心に質問してこようと真面目に取り組もうとダメダメなとこなんよ。
そこいくと、前やんなんかはそのギアがハマっとるんよね。
本業のクオリティを落とさず、農業は余力で始めて結局モノにしてしもうた。
農業に関しては私にもそれは言えて、始めた当初に比べれば、全然違う状況にまでなった。
単に取り組むことを増やしてやみくもにやりゃええかいうとそんなことはなく、むしろどれだけの力を割いて振り向けてどうするかをコントロールせにゃいけんのよ。
例えば前やんは、とってつけたようなことにことごとく出しゃばり、その要点だけをきれいについばんでいく。
後でそれをそれらしき形に組み上げて、使い物になるようにしてしまう。
割く力に限界がある以上、それで最大限を得られるようにかなり考える。
農業を始める前とはもはや別人であり、能力もかなり変わった。
きちんとやり方を組み立てられることで、割いて投入した力以上のことをやってのけて、いつの間にかちゃっかりレベルアップしとる。
しかし、それはそれなりに作戦とテクニックあってこそのものなんよ。
もともと充分な仕事クオリティに達しない者が、充分な考えなしにやみくもにやったところで、こうした力の向上はまずない。
アスペルガーのYさんに関しては、まずその充分な仕事クオリティを1つ作ることに主眼を置いて取りかかることから始める必要があり、それなくして一足飛びに2足のわらじなんかできんのよ。
取り組み内容の増加とそれに伴う発揮実力の一時低下、しかしそれをまた充分なクオリティまで近づけられるかが重要で、前やんはそれをこなしてきとるんよね。
アスペルガーのYさんの会得したいいう気持ちや熱意は買うものの、それ以前の話じゃけえ全く話にならんいうことなんよ。
いくら文字や知識だけの面でどうこうしようと、まるっきり役には立たんのよ。
そういう意味で、アスペルガーのYさんにあれこれ答えておったこと全てムダじゃったんよね。
また、その内容も覚えとらんじゃろうしね。
なんか悔しいんじゃけど、仕方ないのう。
取り組みが増えたあるいは増やす時には、まずそのパワーの分割と配分を決めることと、決めたらそれを維持して持ち堪えること。
さらにジリジリそのできる度合いを上げていき、充分なクオリティまで持っていくことなんよね。
そういうコントロールができてこその2足あるいはそれ以上のわらじであり、足場がグラついておりながらではまずそれはできんのよ。