ゾロアスター系に多いアスペルガー、過去もそうなんじゃけど、仲間内にもおるんよね。
本人も治したくて仕方がないのはわかるんじゃけど、未だ考えあぐねとるんよね。
こうやったら確実に治るぞって言えんけえ、ちょっとつらいんよね。
親戚ではアスペルガーを自力で克服したとおぼしき人が、大叔父の金蔵さんなんよ。
確かにゾロいしクセはありまくりなんじゃけど、考え方や行動はベータ人に近いかな。
亡くなって20年近く経つんじゃけど、肉親の中では誇れる人です。
実家の悪の正体を知ることができ、壊滅させることができたのは彼のおかげです。
彼がアスペルガーを克服して晩年に安泰を得たのにはいくつかの条件があるんじゃけど、それらを繋ぎ合わせることで、あるいは手がかりが掴める可能性があるんよ。
私の通った地獄とは比ぶべくもないんじゃけど、それは意味合いがかなり違うけえね。
金蔵さんの前半生も、かなりの地獄なんよ。
彼は、ある意味家から捨てられたんよね。
五男坊じゃった以外に、小学校の頃に脳膜炎を患い呂律が回らんようになった。
脳のどこかの機能がブロックされ、記憶とかに障害が残った。
そのことで厄介者扱いになり、時計屋に丁稚奉公に追い出された。
そこで一生ずっと下働きいうことのはずじゃったが、それはイヤじゃと思うたらしい。
休みはなく、給料も安く、牛馬のような扱い。
時計修理の技術も、教えてもらえんかった。
しかし、それを助けてくれた人がおった。
それが、横浜におりました彼の従兄弟の政長氏なんよ。
その政長氏はベータ人で、発想が自由な先見性のある人でした。
金蔵さんは、時計修理の技術を本から習得して身につけた。
政長氏は、資金を出して後押ししてくれた。
一緒に映画関係の仕事をするような計画を立てるんじゃけど、親族に猛反対されて潰された。
金蔵さんは兵隊にもとられたんじゃけど、甲種合格とはいかず丙種、それは体が丈夫ではなかったことがある。
あと、独学で読み書きも覚えた。
兵隊にとられた金蔵さんが生き残ったのは、時計修理の技術と読み書きができたことが挙げられる。
戦地では、連日最前線に送られる兵隊の手紙の代筆と、お偉いさんが腕時計の修理を頼むことが多かった。
金蔵さんは、政長氏からいろんなことを教わり、その発想をかなり吸収できたことも幸いした。
金蔵さんを助けた政長氏は、戦争に巻き込まれて亡くなった。
金蔵さんがアスペルガーを克服できたのは、もともと努力家であり学ぶことに意欲があったことと、常に10年後20年後のことを考え続けたことがある。
時計屋をやりながら、息子たちにはそれをやらせんかった。
折しもデジタルが普及し始め、ゼンマイ式の壁掛け時計は廃れることを読んでいたんよね。
はたして、その読み通りになる。
彼の戦争体験も壮絶で、死線を彷徨うたことがある。
いろんな条件があって成功したんじゃけど、それをプログラムとして考えて、当事者を追い込めばあるいは治せるかもしれんのよ。
私は亡くなる前に、金蔵さんの話を聞けて本当に良かったと思う。
話の登場人物は私も知る人が多く、その性格もわかる。
あるいは、仲間内の謀略の力を上げるためのことにも使えるかもしれん。
金蔵さん単体では実家に勝てんかったんじゃけど、事情を知った私は勝ってしもうた。
金蔵さんの仇打ちになったのみならず、金蔵さんと政長氏の断片を拾い集めることで、いろんな能力を仲間内で伸ばせそうじゃ。