たけした君のとこのイチゴの悪化と灰による改善で、彼は灰の重要性を認識した。
彼の無機肥料計算による肥培管理は、完成度の高いもんではあったんよ。
しかし、灰由来の微量元素の枯渇を招き、その重要性への回帰を考えざるを得なくなった。
たけした君の無機農業と、私の灰農業が融合してこそ商品価値の高い作物がとれるようになるじゃろう。
私の灰農業は、灰と豆の窒素固定で土を肥やすんじゃけど、そこまで時間がかかるのと、完全でもない。
即効性のある化学合成された無機肥料、硝酸カリウムの威力はでかい。
建物で言うと、私の灰農業は土台作りが堅固で、建物自体は豆頼りになる。
たけした君の無機農業は建物が立派にはなるが、土台を無視しとった。
この土台がいつの間にか腐っており、今回建物が倒れた。
私の灰農業の土台の上に彼の農業の建物を建てるなら、それこそ立派にぐらつかないもんができよう。
そのハイブリット農業を目指す意味でも、たけした君と相談して試験区を作ることにした。
2年後3年後の実用化に向けて、土だけ、土と灰、土と灰と豆で育ちをテストするんよ。
新幹線で言うところのドクターイエローのようなもんなんよ。
ドクターイエロー自体は旅客を運ぶ仕事はしない。
しかし走行試験をすることで、データを得、安全確保に役立っとるんよ。
イチゴは何もなければどんなもんなのか、灰があるとどうなるのか、豆でアルカリを中和して窒素を補給するとどうなるのか、それを調べる。
これだけで良好な結果が出せるなら、硝酸カリウムに肉迫するパフォーマンスが出せるなら、仕事のやり方が変わってくる可能性がある。
夏の暇な時期にひたすらセイタカアワダチソウを焼き、溜めた灰をイチゴに使う。
また、稲作もやりよるけえ、稲作用の灰として竹を燃やす。
灰のウエイトがでかくなれば、肥料を買う頻度が下がり、経費節減にもつながる。
灰の持つ潜在力がどんだけのもんか、それが計算できるようになればしめたもんじゃ。
セイタカアワダチソウの灰だけで難しくなった時には、アメリカセンダングサが必要になることもあろうかと思う。
このように農業にもドクターイエローは必要。
私は自宅の庭での新規作物がドクターイエローになる。