私が陥った擬似アスペルガー、それは実家での虐待ストレスによるもんじゃった。
そのメカニズムが、今になってわかってきた。
私がやられたのは、海馬。
ここは、新しい記憶をためる場所。
しかし、ストレスで損傷を受けやすい。
その影響が出始めたのが、中学に入った頃。
いや、小学校高学年の時には既にその兆候があったと言えるじゃろう。
しかし、ダメージはその前に受けたもの。
小学校低学年の時、両親が代わる代わる交代で勉強をみた。
マンツーマンでの、過酷なもんじゃった。
問題集を解かせて、ちょっとでも間違うと殴るをくり返した。
あれは辛かった。
親戚の子が遊びに来たりしても、弟たちは自由なのに私だけ閉じ込められての監視学習。
殴られるストレスと、遊びに行けんストレスが混ぜこぜになり、時には正しく解いたのに間違ってんじゃないの~とか怒鳴られて、母ゾロにモノサシのタテで頭を割られたこともあった。
さすがにその時はひどく血が出て、ギャーとか言うてもうた。
終いには何がどうなっとんのかわからんような感じで、殴られ続けた。
テストも80点ぐらいでは文句を言われ、90とか100とっても褒められもせんかった。
だんだん創造性が死んでいった。
無気力、絶望感から、目標意識が失せていった。
弟たちは80点とかとると、ようやったようやったと言われ、その待遇の差もなおさらのストレスになり、やがて兄弟間での確執に発展した。
弟たちはええ成績をとったんじゃけど、私も負けまいと頑張り、高学年の頃はいっつも負け倒しとったF君を追い抜き、有名私立中学に合格した。
しかし、それは低学年の頃に受けた血染めの監視学習が成した技であり、中学合格で張り詰めた糸が切れるが如く何かがプチプチ切れた感じがした。
実際、その通りじゃった。
有名私立中学に入ると、いきなり秀才の集まりになり、プールの水位がひざ下ぐらいから身長ギリギリまで上がったような感じになった。
アップアップして追いつかないような感じになった。
海馬の損傷が効いてきてしもうた。
成績はガクンと落ち、イジメも受けて、ついこないだ小学校高学年の時にあった地位がメタメタになっていった。
そうした中、近づいて来たのがアスペルガーのH君じゃった。
なんで俺みたいなやつに関わるんじゃ?って聞くと、お前は性格が悪くないからなと言う。
彼もゾロアスター系ではあったんじゃけど、行動様式がくどくて変なだけで性格は悪くなかった。
成績は私が下から数えた方が早かったのに対して、彼は中の上ぐらいじゃった。
しかしその成績は、彼のアスペルガーならではのやり方によるもんが、大きく功を奏したもんじゃった。
ズバリ丸暗記なんよ。
あの時不思議に思うたのは、よく私に彼が質問してきては、そうなのかと納得して満足し、笑顔になることじゃった。
しかも、その質問の内容が、とても成績がええもんが聞くような問題でもなく、そんなこともわからんのかって思うようなくだらんことばかりじゃった。
やがて、高校になると丸暗記ではダメで応用問題ばかりになった関係で、クラスの順位がだいぶ入れ替わりよった。
中高一貫じゃったけえ、6年同じメンバーで過ごしたんじゃけど、高校になると私は少し回復してクラスで真ん中ぐらいにはなった。
しかし、件のH君は最下位に近くなった。
彼も、その変な行動様式からイジメを受けることになり、心も荒んでいった。
そうした中、一年や二年ぐらいならそのくどさもなんとか耐えられるものの、時間が長くなるとさすがに嫌気がさしてきた。
あと、本人にとっては真面目な質問も、くだらな過ぎてほとほとイヤになった。
また気づくと、私もなんだか何回も念押しするような変なクセがついてきて、自分でもたまらんようになってきた。
おい六崎、俺がもし現役でK医大行けなかったとしたらどうする?
は?
お、おま、ほ、本気で言うとんのか?
じゃあ受かんねぇっつうのかよ~。
・・・・。
クラスで最下位に近いやつが、現役で受かるはずのないことは、火を見るよりも明らかじゃった。
私は彼と決別することにした。
善人を裏切ることは、ものすごく罪悪感にさいなまれた。
何度聞いたっていいだろう、悪いことしてるわけじゃあるまいし。
彼の言うこと、その通りじゃった。
悪くはない。
しかし、無理。
そして、海馬が十分治らんうちに大学進学。
バイト先で擬似アスペルガーで苦しむことになる。
結局、30歳ぐらいまでその後遺症は残ることになる。
海馬損傷による記憶障害。
新しいもんが覚えられず、成績ガタ落ち。
しかし、勉強や仕事能力を上げようと頑張るうちに、それがリハビリになっていった。
ゾロアスター系得意の丸暗記も、ゾロアスター系のように忘れずにストックしておけば、その知識はいずれ役に立つと思い、それをくり返した。
大学時代小周天をやり、心のゆとりを持ちながら自分を修復できたことが大きかったかもしれんのよ。
H君のことも、一緒におるのが中学だけじゃったら、あるいは今でも友情があったかもしれん。
しかし、彼を裏切った罪悪感で苦しむ中に、私は私の立ち直りを実現できたと思うんよ。
海馬の損傷は、このようにリハビリで治せる余地がある。
アスペルガーの人らの海馬から大脳皮質へのブロックは、この奥にある問題なんよ。