大学時代に、結果的に恋愛関係にならんくてほんまよかったと思える。
当時は、まだ実家が難敵として立ちはだかり、そのためにダメにされるいう問題もあった。
いや、それはそれ。
しかしそれがないとして、あの当時の誰かと恋愛関係になっとったとして、それが結婚して今も続いとるかいうと、それは考えられんのよ。
状況的に付き合うとして、同級生か助手のお姉様方になったじゃろう。
先輩や後輩とは、なぜかあんまり縁がなかった。
同級生では、入学時にMさんを見かけてこの人ええなって思うとったら、向こうが私を好みとか。
おおお、キターッ!!!
いや、しかし待て、私は小周天の修行をすべきじゃなかったんかい。
う〜む、そんでもMさん捨て難い、どうする。
そんなこんなで悩んどるうちに、他の人と付き合い始めて迷いは去った。
他にも一浪のお姉さん同級生のMさん、この人もええなとか思うとったんじゃけど、彼氏持ち。
キツいバイトもこなしながら進級する姿に、尊敬しちゃうとか言われて、思わずニヤケた。
いや、そらぁニヤケるじゃろ!ニヤケんてか!いや絶対ニヤケるね。
ま、ええけど。
う〜む、この歳上のきれいどころ、その尊敬しとるとこを強引にモノにしまくってやろうかって、ううう、思うた。
思うたぞ、何が悪い!
いや、そんでも余裕がなくて無理。
手出ししとったら、バランス崩してバイトも勉強も修行もオジャンになりそうで、てかオジャンになるのう。
あと、同級生の女子が数人でバイト中の私を目当てに、押しかけたこともあった。
他にはキツいバイトをこなしながら頑張る姿には、どこをどう伝わったか、助手のお姉様方がわらわらと。
あなた、餃子屋さんでバイトしてるんですって?とか聞かれた。
そのお姉様の中から、それとなく打診されたこともあった。
いやいやいや、悪い気はせんものの、う〜む、それってどうなん?
いや、やはり話が合わんのよね。
いやいや、よ〜く探せば話が合う人もおったんかもしれんね。
ただ、その話の合う人おったとして、どうか。
やはりね、ダメになっとったね。
その理由は、学部の特殊性にあるんよね。
大学は薬学部で、国家資格を前に受験と同じような状況が大学では続く。
つまり変化の中にあって、気を抜くと留年する。
留年して学年が違うようになると、その恋愛が気まずくなって破綻する。
特に男性が留年すると、まず終わる。
シビアなテスト勉強や実習の日々で、入学時と卒業時では意識は大きく変わる。
例えば入学時に言うてきたMさんと、その時付き合うことになったとして、卒業まで持つか?まずそういう問題がある。
ある程度進級した時点での歳上のきれいどころのMさんとならどうか、まあ卒業まではなんとかなるとして、その後にダメになるじゃろう。
卒業して就職するとなると、そこでまた意識が変わる。
薬剤師の業務は、大学での成績など関係なくなり、同業者としての技量の勝負になる。
男性より女性の方が上手いけえ、そこでまた立場の逆転がある。
強引にモノにしとったとして、やはりダメになるじゃろうね。
それは、他の同級生にも言える。
バイト先にまで来た人らは、おそらく少なからず私に好意を持っとったじゃろう。
私の打ち込む姿に、それなりにすごいとか思うてたくましさを感じまくり倒しとったんかもしれん。
しかし、そんとな人が薬剤師技能で自分の方が上手いとなると、やはり難しいじゃろう。
あと、助手のお姉様方なんかは、教授に言われたことをするだけの、他の世界を知らん純粋培養の人らで、他に何もできん。
おそらく話す内容がなくなって、冷めるじゃろうね。
卒業した後の同業者は、もうだいたい定まった感じでこれ以上の変化はないものの、そうなるとそれで固まっていく感じになるかのう。
そこで話の合う人を探すのも至難じゃし、むしろ同業者じゃない方がええのう。
そうなると、大学から同業者までで探すとなると、いろんな意味で不可能に近いんよ。
途中でええなって思う人でも、その変化の過程で合わんようになることが多いし、難しいんよね。
そういう意味で、大学時代の知り合いの誰とも結果的に恋愛関係にならんでほんまよかった。
そこに六崎家のゴタゴタが加わったら、もうそれこそメチャクチャになる。
それも含めての、大学は修行の時期じゃったんね。
普通の学部なら、まずそういうことはないんよ。
薬学部以外では、医学部とか歯学部とかにも同じようなことは言えるかもしれんね。