さて、昔話です。
ベータ星から移住して来たベータ人は、高い酸素濃度と繁殖力旺盛なシダの森林や危険な巨大昆虫の蔓延る環境で、城壁を備えた都市国家を整備して暮らし始めました。
ボンベの二酸化炭素で酸素を薄めながら呼吸し、母船にある機械で粘土や石などを加工して外敵の侵入を防ぎながらの厳しい生活です。
活用できるもんも限られ、そのために戒律を制定してなるべく公平になるようにした。
これといった娯楽も乏しく、食糧もろくなもんがなかった。
そうした中、戒律生活に嫌気がさして色欲関係にのめり込む輩が出てきた。
それがラファエル系。
もともと恋愛感情が強かった彼ら彼女らは、その関心事である色欲の世界に楽しみを見い出そうとした。
自由恋愛と称し、其処彼処で不倫騒動やら色情問題を起こして、戒律に従わなくなった。
色情で籠絡した相手から物資を横流しさせたり、必要労働を義務付けられとったもんも投げ出して遊びほうけるようになった。
こうした問題に、首脳部は頭を抱えることになった。
なんだよあいつら、片っ端からいろんな人を肉体関係に誘って遊び暮らしとるぞ。
ひっかかる方もひっかかる方じゃ、何考えとんのじゃ?
これでは、危険な環境から身を守ることができんようになる恐れがある。
さて、どうする?
いろいろ協議した結果、別々に住むことになった。
というのも、話をしたところでその行動が改まるわけでもなく、真面目に修行するつもりもない。
そんなやつらは要らんけえ、出て行きゃええわとなった。
すると、上等じゃねえか、こっちだって戒律なんかゴメンだね。出て行くよとか言うて出て行った。
さらに、それを後追いで追いかけて脱走する者が相次いだ。
ラファエルタウンでは、××パーティーがあるらしいぜ。
××ショーとかもあるらしいぜ。
色欲フルコースの甘美な世界に、金星系の男性が多く籠絡され、次々脱走。
ラファエル系のやつらは、あんたらここに来たいんなら、ブツは持って来たでしょうね。とか言いながら、脱走者に生活必需品を持って来させた。
あまりにも秩序が乱されよるけえ、脱走者には帰還を許さんような風潮が強まってきた。
やがて、脱走者の生活は破綻していくことになる。
そんな風俗嬢のヒモみたいな生活が、永続的に続くわけはないんよ。
そんでこのことからもわかるのは、心が違う者同士は、長いこと一緒には暮らせんいうことなんよ。
そもそもベータ星からの移住は、新しい環境で修行したいいうことで集まった人らが決断したはずなんよ。
ベータ星でのマンネリ生活を捨てて、新しい経験新しい能力を求めてのことじゃったはず。
そういう人らで作ったのが、地球での城壁つきの都市国家なんよ。
しかし、恋愛にしか関心がなく、戒律を投げ出しては、もはや最初の理念からは程遠いんよ。
あれは集団離婚、集団における離婚なんよね。
個人個人でも、最初愛し合うて付き合ったはずが、やがてお互いの理想の違いから一緒におることが耐えられんようになると離婚になるんじゃけど、そういうことなんよね。
そもそも好きにならんかったら、結婚とかはしない。
外見も、全くのブサイクでは恋愛感情も出ないんじゃろうけど、その好みだけで選ぶと、大抵心はかなりかけ離れとる場合が多い。
私個人を見ても、かなり一般人とはかけ離れとるけえ、一般女性とはまず合わんのよ。
変わり者過ぎると、そうした傾向は強まるのう。
私も相当変わり者なんじゃけど、さりとて合う人がおらんわけでもないんよ。
それは自信がある。
私が目指すべき修行の方向性を向いとる人は、多くはないにせよ確実におる。
私がやりよる奇行も、一般人からはただの変人なんじゃけど、目的と信念がわかり共感納得できる人は一緒に住めるんよ。
以前恋愛中毒のセシウムカルトn崎にコクられたことがあったんじゃけど、どこをどう間違えればそうなるかが不思議でたまらんのよ。
やつが、女に生まれて私の嫁になるのが一番よかったとさ。
やつこそは、先ほど述べたラファエル系の生き残り。
目的持って修行する者と、男性への恋愛感情で突き進む恋愛中毒者、心の違いがわからんのかのう。
バカじゃのう。
交流のあった時期に私が持っとった感情は、このバカ治すことができるのは私しかおらんじゃろいうもん。
しかし、今はサジ投げた。
あの頃にあった言い知れぬ怒りや嫌悪感や憎悪は、古代の都市国家を破滅に導いた種族ラファエル系に対する3億年越しのもんじゃった。
新しい民族がどんどん飛来して地球の人口も増え、過去の都市国家での罪もドサクサに紛れてしもうた。
しかし、今またセシウムカルトとして被曝誘引しとる懲りない本性に、呆れ果てるのみなんよ。
ラファエル系が転生絶滅したら、そういうことも埋もれてわからんようになるんじゃろうね。