海水で栽培するサツマイモ、しかも越冬した昨年のつるを4月に植えたんよね。
砂浜の生い茂る草をどけて冬に開墾、そこに海水を撒いて春までの雨で塩分を逃す。
数年ぶりに再開墾して、耕作します。
早めにできたデカい苗、それを置き石して地面に押し付けてかなり発根させます。
それを5月に分断して株分け、さらに1ヶ月経って行ってみると、草ぼうぼう。
草をできるだけ除去した上で、2回目の株分けなんよね。
これで、もうしばらくは立ち入れないんよね。
とりあえず、やるだけやりました。
それで、この海水栽培について説明してみたいんよね。
これができる品種いうのは、サツマイモの中でも草灰で育つタイプなんよ。
サツマイモには、木灰でしか育たん木灰グループと草灰でも育つグループがある。
灰としてクオリティが高いのは木灰で、これはたくさん作るのには相当手間がかかるんよね。
安納芋やマロンゴールドなんかがあり、概ね育つのが遅いんよ。
この木灰グループを海水栽培しても、ほとんどとれんのよ。
草灰タイプであれば、紅あずま、紅はるか、鳴門金時、黄金千貫、紫いもなんかがあるんよね。
これらは過去の実績があるんで、草で日照を遮られんかったら大丈夫なんよ。
本来農地でもない砂浜でも充分とれるんなら、わざわざ畑を使うまでもないんよね。
畑で海水撒いてってやると、畑に塩分が残って他の作物ができんようになる。
しかし、荒地や砂浜なんかには塩分が多少残ろうと、痛くも痒くもない。
そこで海水で作れるもんがあればそれで作り、畑では他のもんを作った方が土地の有効利用いうことになる。
食糧がストップした時に備えて、そういう農地以外の農地転用テクニックをいくつか編み出しておけば、いずれ役に立つじゃろう。
海水も砂浜も、ほぼタダみたいなもんなんよ。
ほぼ何もないような不毛な土地が、産物を生み出すとなれば、それは大きな価値があるんよね。
海水も本来ならほとんど役に立たんし、砂浜も同じ。
越冬させたサツマイモのつるも、本来なら冬にダメになっとる。
ほぼタダに近いもんを、暖かい屋内で温存することで、春一番で苗に転用できる。
こういうテクニックで、本来食糧が作れんとこから作っていくことを考えりゃええんよね。
それで、このサツマイモの海水栽培なんじゃけど、カギはにがりと塩分なんよね。
にがりは、だいたいが塩化マグネシウムなんよね。
そんなもんで、サツマイモの必要なミネラルが賄えるはずがないんよね。
あとは塩分は、ストレスになるんよね。
こういうもんは、おそらくそれがあることで、他の土中のミネラルを集めるんじゃろうね。
にがりそのものもある程度は吸われるんじゃろうけど、それだけじゃ足りんけえそれ以外を余計に吸おうとする。
あと塩分があるとストレスがかかり、目に見えた変化いうのは、甘さが増すことなんよ。
ストレスがかかると、それに負けまいとしてより強くなるいうこと。
それが、海水栽培のカラクリじゃなかろうか。
それでサツマイモは、窒素固定もやるんでミネラルだけがあれば空気中から必要なだけ窒素を吸収するんよね。
サツマイモに限らず、植物の多くは海水のにがりに反応して育ついう特性があるんよね。
ともあれそうしたことを踏まえて、作業としては冬に海水を撒いた砂浜に草灰タイプのサツマイモを植えて、6月末までになるべく株分けしとくいう流れが出来上がるんよね。
草灰タイプのサツマイモは、美味さとしてはやはり安納芋みたいな木灰タイプには敵わないものの、全く何もないよりははるかにマシなんよね。
久々にやったことで、こうすりゃよかったいうデータもまた集まった。
来年以降の作付けに、そうしたデータはまた役に立つじゃろう。
とにかく草灰タイプのサツマイモは、わりと簡単に実験できてすぐにたくさんとれる。
ノウハウとして、いろいろ積み重ねていくことでまた技術が進歩するじゃろう。